唯一無二の音を響かせる喜び。自作アンプを作ろう!
オーディオは沼にハマると際限なくお金が出ていく趣味ですよね。アンプ、スピーカー、ケーブルなどお金を出せば良い音が再現できるのは確かです。
しかしそれはある程度のところまで機材を揃えると、そこから先はプラシーボ効果などの自己満足の域が強いと僕は勝手に思っています。
音質には人それぞれ好みがあります。派手なドンシャリだったり、落ち着いたフラットだったり、ボーカルが迫り出すかまぼこ型の音質だったり。雑に言ってしまえば安い機材でもその人が満足すればそれは良い音なんですよね。
だったら究極の自己満足、自作アンプを作ろうよ!という企画が今回の記事。コンデンサ、抵抗、コイル、ターミナル端子、ACアダプターなど無限の組み合わせで自分だけの音が作れます。世界に唯一無二の音を鳴らしましょう。
目次
デジタルアンプを自作する
アンプといってもアナログアンプ、デジタルアンプ、真空管アンプなど色々な種類があります。
今回はICチップを使って小型に収めることができ、回路がシンプルになり易いデジタルアンプを作成することにしました。
調べてみると、Tripath社が出しているAT2020というデジタルアンプICが低音も効いた良い音を出すらしい。他にもYAMAHAのYDA138というICもメジャーです。結局ぼくはどちらも買ったのですが、AT2020をメインに改造していきます。
※現在はAT2020が絶版になったらしく手に入らない様です。なのでデジタルアンプを自作するならYDA138をおすすめします。
僕は以前仕事でPCマザーボード上のオーディオ回路設計を担当していたのですが、ICにはこのYDA138を載せていました。こちらも良い音しますよ!その時の経験は今電子回路遊びをするときにわりと役立ったりしています。笑
記事はAT2020の話中心で進めますが、YDA138とは少し回路が違うだけで基本的な考え方は同じです。必要な道具・部品の調達・筐体の加工、音質を魔改造したいときの参考にしてもらえると嬉しいです。
データシートを手に入れよう
まずは回路の全貌を把握するためにも、TA2020のデータシートをダウンロードしておきます。
このデータシートに、「ICチップ周辺にはこんなコンデンサや抵抗、コイルを置いてくださいね。」「並列にコンデンサ咬ましてくださいね。」なんてのが書いてあります。(簡略しすぎてる気もしますが…w)
このデータシートを元にユニバーサル基板(※1)に素子(抵抗やコンデンサ)を乗せて配線すればデジタルアンプが作れちゃうんですが…よーし作るか!と言うところまで来てAT2020を使ったキットが安価で売っていることを知ってしまったんですわ。
※1:ユニバーサル基板というのは以下の様な規則正しく穴だけ空いた基板のことを言います。
ユニバーサル基盤に自己流で配線するとごちゃごちゃになって訳ワカメになることも多く、ごちゃごちゃするのが嫌いな自分はキットのプリント基板(※2)を目当てに結局キットを買うことにしました。
※2:プリント基板は以下の様な基板に電気の通る道が埋め込まれた基板のこと。
AT2020キット、YDA138キットを入手
キットだったら正直言ってデータシート見なくても指定の場所に素子を置くだけで、なんの知識もいりません。
学研の電子ブロックみたいなもんです。
だけど、データシートを理解しておくと、自分なりに素子を変更してカスタマイズもできちゃいます。
今回はNFJさんからTA2020とYDA138の両方のアンプキットを購入しました。しかも安いから2つずつ。
※現在はTA2020の取り扱いはありません。
安いなりにも、それぞれの素子の性能は最大限努力した選定がされていて、キットのまま作ってもそれなりの音がなると思います。
2つずつ購入したので、それぞれ1台はそのまま組んでみました。左がYDA・右がTA2020。
カードぐらいのサイズ。この小ささで収まるとかデジアンはやっぱすげぇ。
しかも毎度のことながら電子部品は美しい。
簡易的に繋いで音を出してみると、このままでも十分満足できるハキハキした音が出てきますね。正直ここまでで終了で良いと思います。
しかし…今回は自分だけの音というロマンを求めてアンプを自作しているのでコンデンサ、抵抗、コイル、スイッチ、信号のin/outターミナル、LED、など自前調達してこだわることにしました。
さらに電源部分に平滑コンデンサと言う回路を加えて、音に厚みがでるだろうと思う工夫を施します。この編は後ほど解説していきます。
素子選び
自分色にチューニングして行くのはデータシートの以下の箇所。
左はアナログ信号が入ってくるinput部分、右はアナログ信号が出て行くoutput部分です。信号の出入りする音質に影響が大きそうな部分の素子だけキット付属のものから変更していきます。
YDA138の場合はデータシートのP9とP11の以下の部分ですね。
・input部分
・output部分
素子の数を見て分かる通り、TA2020よりYDA138の回路の方が断然シンプルで自作としてはやり易いです。
ただし唯一気を付けたいのはoutput部分の回路(LCフィルター)で、完成後に繋ぐパッシブスピーカーのインピーダンス[Ω](スピーカーの持つ電気抵抗)に合わせてコイル[μH]とコンデンサ[μF]の数値を変えてくれと上の表に書いてあることです。
まぁそこまでシビアにならなくても音は鳴ると思いますが。
TA2020で赤枠をつけた部分の素子をどんなものに変更したかというと、音響用の高精度で良い音が鳴ると評判のものを選んでみました。
コンデンサ・抵抗のメーカーや種類、容量を変えるだけでも音質というのは変わってくるんですよね(自己満だけど
・コンデンサ
このアンプを作ったのが結構前なので忘れてきてるんですが、音質に関係あるのか分からないけどZobel network部分には音響コンデンサとして評判の良いERO製のオーディオ用メタライドポリエステルフィルムコンデンサを使ってみました。
※Zobel network:正直自分も良く分かってないけど高周波カット&発振防止回路らしい。音質に影響するのかしないのか不明な都市伝説的なフィルタ。
↓これの0.22μFのやつ。
あとはZobel networkの右側の0.1μFには、これまた定評のあるWIMA赤いコンデンサを配置した。
電源周りの電解コンデンサも音響用の最上位グレードのニチコンMUSE KZと東信工業Jovial UTSJシリーズに変更した。
他にもこだわったけど何を使ったか忘れてしまった。。。笑
・抵抗
誤差の少ない「タクマン REYオーディオ用抵抗」を使いました。通販で売ってなくて秋葉で買った記憶があります。
とにかく良く分からんけど適当にオーディオ用の抵抗とコンデンサをかき集めただけなのはお察しの通りです。
ハンダ付けして回路を作る
素子を基板に接着するのに必要なものは以下の道具。これがあればなんとかなります。
※テスターは必要に応じて。
はんだ付け工程は作業に夢中だったので写真は一切撮ってません!なんか色々ごちゃごちゃやった末、出来上がったのがこちら。
電源部分の+12VとGRDに並列に3300μFの大容量コンデンサを2つ渡す魔改造を施した。
なぜこんなチューニングをしたのかと言うと、この並列に渡したコンデンサは平滑コンデンサと呼ばれるんですが、簡単に言うと平滑コンデンサーを入れることで常に安定した電圧の供給ができるようになり、パワーをもっとも使う低音出力時にパワー不足にならない効果があるんです。
コンデンサには電気を溜め込める小さな蓄電池みたいな特性があるため、パワーの必要のない場面で溜め込んだ電気をパワーが必要な場面で吐き出すんですね。それにより低音が良く響くようになると言う作戦です。
ケース、電源、端子周り
素子の他にもケース、電源、入出力端子、スイッチ類も調達。
ケースはこちらのブログの記事をパク参考にさせてもらいました。カッコ良いと思ったものは取り入れていくスタイル。
前面にはトグルスイッチ、ボリュームつまみ、緑のブラケットLEDを配置。
端子類は先に付けておき、それぞれ端子と基板を電線で繋げていきました。
ケース後面には金メッキの入力端子とスピーカーターミナル、AC電源端子。
なんとなく電源とoutput部分の電線だけ太いものを使ってみました。スピーカーもモンスターケーブルとかぶっといの使うと音が良くなった気がしますよね。完全に気休めだと思いますけど。
ACアダプターは12V-3.8Aの小さなものが安かったので買ったけど、12V-5.0AのスイッチングACアダプタぐらいにした方が余裕のある音がなるのかな?
ケースはタカチ UC型ユニバーサルアルミサッシケースUC12-7-16DDと言うもの。それぞれの端子はこのアルミケースに自分で穴を開けて設置しました。穴あけ方法としてはピンバイスで穴を開けて、小さい穴をテーパーリーマーと言うグリグリする器具で広げてました。
ピンバイスを使うのはミニ四駆の肉抜き以来。爪楊枝をフロントに付けたレイスティンガーを肉抜きしすぎてコースアウトし凶器と化した悪夢が蘇る。
お手軽に済ませたい人はアルミケースキットもあります。安いし。
自作アンプ完成!
箱を閉めたら完成!控えめに言ってもかっこいいんだが。
さて、音がなるか・・・
一発で鳴ったー!!と思ったらなんか音が小さい。ノイズも入ってるし。テスター使って調べててみるとスピーカーケーブルを挿すターミナルの接点からアルミケースへ漏電しているようだ。完成してから絶縁のためのスペーサーを買ってくるのを忘れてたことに気付いた…。
今更買ってくるのも面倒なので、対処法としてすげー邪道だけどケースとターミナルの接点に嫁さんのマニュキアのトップコートを塗って絶縁してみた。その後テスターで測定したらしっかり絶縁できていたので取り敢えずこれでいいやと満足。ノイズも入らなくなった。
あとは気になるのは電源を入れた時に「ポッ」と言うポップノイズがなること。平滑コンデンサを追加した弊害かな?対策するのも面倒臭いし電源ONした瞬間だけなので特に対策せずに放っておくことにしました。
音質はデジタルアンプっぽいハキハキしたドライで乾いた音。スネアが妙にリアルに聞こえる。疾走感のあるロックも良いけど、エレクトロニカ、テクノ、ドラムンベースなんかも合う。
squarepusherとかもう最高です。
自分で作ったから、もうなんでも良い音に聞こえちゃいますね。自己満ですけど。
実はこの記事、デジタルアンプを作って2年越しぐらいに書いたものなんですが、このアンプ毎日使ってます。10万弱して買ったmarantzのアンプを差し置いてです。
※marantzのアンプは引っ越してからシアター組める部屋がなくなって物置で眠っています。使っても良いんですがやはり大きくて重たいのがネック。
その点、今回の自作アンプは小さい・軽い・スイッチon・offとボリュームだけのシンプル機能。その使いやすさが勝因です。自分で作った贔屓も5割ぐらい入ってますけどね!笑
電子回路ってハードル高いかもしれませんが、完成して動くとめちゃくちゃ楽しいですね。キット部分のみで作れば誰でもできちゃいます。
何か物作りがしてみたい人や、お子さんと夏休みの自由研究に良いのではないでしょうか。
次にオススメの記事
ドライバー使って組み立てるだけで簡単だけど、外付けHDDは自分で組んで安上がりに使ってます。
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Zobel networkは主に発振防止のために使用します。スピーカーは抵抗とインダクタンスの直列回路に等価されるため可聴周波数域を超えるとインピーダンスが大きく上昇するため発振しやすくなります。また、スピーカーが接続されていない場合も同様です。スピーカーが接続されていない場合は発振の発生を知る術がありませんのでアンプICが焼け焦げて発振を知ることが普通ですが、経験的には発振に気づかないと他の原因での故障を疑いがちなので、数回壊した後にようやく状況を理解するということもあります(負荷を繋ぐと発振しないからなかなか原因が分からないんですね)。オーディオ回路のスピーカー端におけるZobel networkは超高域周波数での負荷インピーダンス補正が主目的なので、カットオフ周波数は数百キロヘルツ程度に設定することが普通ですが、デジタルアンプの場合は最大スイッチング周波数よりも上に設定します。無くても良いのかと言えば、出力端がローパスフィルターで構成されているデジタルアンプの場合は必要ありません。出力フィルターのコンデンサが十分な(数メガヘルツ程度の)周波数特性を持っていれば問題ありません。と言うわけで、Zobel networkに使用するコンデンサは可聴周波数域では(インピーダンスが十分に低い)スピーカー負荷にはほとんど影響を与えませんので高級なコンデンサを使う意味はあまり無いですね。普通のマイラーコンデンサで十分です。参考まで。
すっごく詳しい情報ありがとうございます!!なるほど〜!
Zobel networkに高級コンデンサ使う意味なかったのですね〜汗
コメント残していただき感謝です。また一つ賢くなれました!